山手線一周ライブ配信が招いた悲劇…「最上あい」さん謎企画の背景にあったライバー事情【高田馬場刺殺事件】

3月11日の午前10時前、JR高田馬場駅からほど近い路上で20代の女性が男に刃物で刺され、死亡した事件。被害者は、東京都多摩市の佐藤愛里さん(22)だと判明した。佐藤さんは「最上あい」の名前でライブ配信サービス「ふわっち」の配信者として活動しており、事件は「山手線1周ライブ配信」の企画中に起きた。

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前日に被害者と「コラボ配信」をしていたベテラン配信者
「ふわっち」とは、株式会社jig.jpが2015年に提供をはじめたライブ配信アプリで、競合他社に先駆け「投げ銭」機能を実装したことで、“稼げる配信アプリ”として配信者に人気があるそうだ。

事件の前日、佐藤さんと「コラボ配信」をしていた、ふわっちのベテラン配信者・まさやん(@maa_masayan)氏は、こう語る。

「“山手線一周”の企画内容について相談を受けていたのですが、まさかこんなことになってしまうとは……。彼女とは知り合って1年ほど。当日は僕も配信の様子を時折見守っていたので、ショックでした」

「コラボ企画」をする間柄だったと聞くと、普段からやり取りがあったように受け止める人が多いかも知れないが、「特別親しい間柄というわけではないんです」(まさやん氏)。

そこにはYouTubeなどとは異なる、ふわっち特有の事情があった。

「ふわっちのコラボ企画というのは、配信者なら誰でもできるんです。配信者がライブ配信をしている画面から、別の配信者がコラボ配信を“申請”できる仕組みがあり、配信中の人がOKすると、すぐにコラボ配信が始まります。なので、事前に打ち合わせをしていたわけではなく、前日にコラボしたのは本当に偶然でした」(同)

LINEのテレビ通話を第三者に配信するようなイメージが近いのだろうか。まさやん氏が佐藤さんとコラボ配信をしたのは、今回も含めて合計3回ほどだったそうだ。

男性配信者と女性配信者、より稼げるのはどっち?
事件の前日に「コラボ配信」をしていたまさやん氏と佐藤愛里さん(まさやん氏がXに投稿した動画より)

逮捕された高野健一容疑者(42)は、佐藤さんに「多い時で月に10万円ほど投げ銭をした」と供述しているという。佐藤さんのフォロワー数は2600人を超えており、「ホワイト」からはじまり10段階に分けられる「配信者グレード」では最高位にあたる「プラチナプラス」だった。グレードは配信者の受け取った課金額、すなわち「投げ銭」の合計額によってランクアップしていく。彼女が得た投げ銭額の大きさを物語っている。

「彼女のフォロワー数である2600人は、配信者全体で見ると“中の下”ぐらい。それでも、それぐらいのフォロワーがいて、プラチナプラスの実績があるということは、月に100万円ぐらいは稼げていたんじゃないかなと思います」(まさやん氏)

山手線一周ライブ配信が招いた悲劇…「最上あい」さん謎企画の背景にあったライバー事情【高田馬場刺殺事件】(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

投げ銭は、配信アプリ内の「アイテム」を介して行われる。

「1番安いアイテムは160円からあり、最高額のアイテムは“ビッグバン”というやつで、1万5000円します。ビッグバンは同時に10個まで投げられるので、投げ銭の一撃最高額は15万円ということになりますが、さすがに僕も経験がないですね……」(同)

もらった投げ銭のうち、配信者の取り分は「42%ぐらい」とのこと。残りは運営会社の収益になる。つまり、月に100万円の収入を得られていたのだとすれば、視聴者の投げ銭は月200万円を超えていたことになる。

「トップクラスの男性配信者はファンの数が多い。1回の額が小さくても広く浅く投げ銭を集められる人が多い印象です。対して、女性はいわゆる“ガチ恋”のファンを1人でも見つけられると、それで一気に投げ銭額が増えることも多いですね」(同)

実は歴史のあった「山手線一周ライブ配信」
佐藤さんが当日、配信していた「山手線一周ライブ配信」。金銭トラブルがあったともされる高野容疑者に居場所を特定されてしまう要因となったとの指摘は少なくない。

「山手線一周はふわっちでは鉄板の企画なんですよ。投げ銭機能の実装が早かったふわっちですが、サービスがスタートしたばかりの頃は、まだそうした機能もありませんでした。そこで当時の配信者が編み出したのが、山手線一周の企画だったのです。例えば“いま新宿駅にいまーす”と配信すると、そこにファンの人が“リア凸”してくれる。そこでオリジナルステッカーなどを販売して、収益にしていたんです」(まさやん氏)

今は投げ銭機能が実装され、ステッカーを売る必要はなくなったが、その“文化”だけが残っているという。

「フォロワーの増えてきた若い子たちが、“私もそろそろ、みんなのやっている山手線企画やってみるか”というノリでやっているんだと思うんですが、そういう“歴史”まで知っているかはよく分からないですね」(同)

配信者とファンが接触するという、リスクのあったライブ配信文化。jig.jp社は〈本事件に関する事実確認を行い、警察への情報提供等の捜査協力を行っております。〉との声明を発表している。

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「週刊新潮」および「デイリー新潮」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記の「情報提供フォーム」まで情報をお寄せください。

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